お知らせ一覧

涙の働きと
ドライアイ

1. 涙って?

比重は1.59%、浸透圧は0.9%の生理食塩水に相当します。
正常時の正常分泌と何か刺激があった時や泣くときに主涙腺から出る分泌があります。この正常分泌は極めて少量で、1分間の分泌量はわずか約0.7~1.2ul、就寝時にはさらに涙液交換率は低下します。

角膜表面を保護するムチン層と約1ulの涙液が厚さ約7umの非常に薄い均一な涙層を形成し、1番外側にマイボーム腺から分泌された油の膜の3層構造で被われています。
点眼薬1滴量は30~50ulに設定されている事が多いです。
(眼科から処方される点眼薬は5mlが多いので、1瓶は100滴分に相当します)。


涙の働きは、

  1. 目の表面を潤わせ、角膜・結膜を保護する。異物を洗い流し、目の表面を掃除します。
  2. 角膜に栄養を与える、瞬きを介して大気から取り込まれた酸素を角膜に供給します。
  3. リゾチームに代表される殺菌作用があり、目を外敵から守ります。

簡単に言えば、たっぷりの綺麗な涙で目の表面に酸素と栄養を与え、しっかりとした瞬きで綺麗にお掃除してくれる栄養ドリンクのような物です。

2. ドライアイとは?

「涙液の量的または質的異常により起こされた角・結膜障害」と教科書には記載されています。
涙の分泌量減少だけでなく、瞬目が悪い為に涙の入れ替わりや表面のカバー力が悪かったり、涙の分布が均一でなかったり、分泌物が多いために涙が汚れて質が低下した涙の事です。

目の表面の潤いが保たれていない状態のことです。

  1. 量:涙液分泌不全型ドライアイ
  2. 質:BUT短縮型ドライアイのBUT(Break Up Time)=涙液層破壊時間短縮型ドライアイ


ドライアイ人口は2200万人以上で、年々患者数、重症例が増えています。
その背景には、

  • パソコンの普及による瞬目減少や涙液分泌減少、涙液の質の低下
  • 空調により室内の乾燥
  • ソフトコンタクトレンズ装用者数の増加  装用時間の延長
  • 調節異常の60%はドライアイを合併
  • ドライアイに対する患者の意識の向上
  • 精神的ストレス

3. ドライアイの症状や検査所見

慢性の眼表面の乾燥感で、はっきりしない、さまざまな症状が目に不快感を与えます。
疲れ目 乾き目  目の痛みやかゆみ 異物感  めやに  かすみ目 充血  など
涙液分泌検査が必要です。

4. ドライアイの治療

防腐剤無しまたは少ない人工涙液、角膜保護剤を点眼して 乾燥感や目の症状を改善させます。
ムチン層分泌を促す点眼薬(ジクアス・ムコスタ)

ジクアス点眼液(ジクアホソルナトリウム)は、水分ムチンなどの成分の分泌を促進する作用量と入れ替わりを良くするために、ゆっくりとまばたきをしましょう。

さらに、涙液の過剰な蒸発を防ぎ、平滑な光学面を形成し、まばたきをスムーズにする涙の外層にある綺麗な油膜を作ることも大切です。まばたきした時に泡が眼瞼縁にたまるようであれば、油膜不全です。

そのような時には、入浴時にでも蒸しタオルを目の上にのせて、温まった時に目の縁を押さえて拭くと良いです。約1ヶ月くらい根気強く毎日行ってみると、目の疲れも取れていく、温罨法(おんえんほう)という一つの治療法でもあります。

重症例では、涙点プラグ挿入や涙点閉鎖などの外科的治療も必要となります。このドライアイには、シェーグレン症候群など全身疾患が隠れていたり、薬剤性上皮障害で似たような状態になることから、安易に市販薬で済まさず、眼科医にご相談ください。

花粉症って
アレルギー?

1. 花粉症とアレルギー

アレルギー疾患とは、体に何らかの有害物質が入ってきた時に、体が自分の身を守る為に有害物質を体外に排出し、抵抗力をつける免疫反応により起こってくる疾患です。鼻炎、結膜炎、皮膚炎から全身への影響には個人差があり、時期や他の条件も加わると複雑になります。
また、アレルギーには、通年性のものと季節性のものがあります。花粉症とは植物の花粉が原因となって起こってくる季節性アレルギー疾患で、春先のスギ、秋のブタクサが代表的です。しかし1年中、他のどの花粉にも反応します。

また、ハウスダスト、カビなどに対する過敏症や、最近では他の点眼薬、PM2.5や黄砂、住宅からの化学物質に対するアレルギー、ストレスがベースにあることが注目されています。

2. 花粉症の症状

季節性に出現し、掻痒感、充血、流涙、糸を引くような眼脂などの急性結膜炎の様な症状が出ます。涙液中のスギ花粉などのアレルゲンが目に入ると、抗原特異的IgE抗体を産生します。

結膜局所に存在する肥満細胞表面のIgEレセプターと結合し、肥満細胞よりケミカル・メディエーターと呼ばれるヒスタミン、セロトニンが眼局所に遊離されます。

これが三叉神経、毛細血管に存在するヒスタミン受容体に作用して、眼掻痒感、充血、流涙などの目局所症状が表れます。程度の差と発症の前後はありますが鼻炎との合併が見られます。かゆみは体温上昇、気持ちがほっとした時にひどくなります。

3. 花粉症の診断

A. 目のアレルギー反応の証明

めやにの中の炎症細胞の種類で原因が鑑別できます。

以前は染色して顕微鏡検査が必要でした。最近では染色方法も簡易的になってきましたが、一般に普及されるまでには至っていません。
 

B. アレルゲン(アレルギー原因物質)の検出

皮膚テスト(スクラッチテスト)は、診断用アレルゲンスクラッチエキスを用いて前腕皮膚で判定する方法で、安全性が高い方法です。

スギだけでなく、いくつかの原因が考えられる場合には、抗原特異的IgE抗体を調べる血清学検査が良く、1回の採血で多項目のアレルゲンについて測定できます。

4. 花粉症の治療

A. 原因除去:最も大切!

  • 衣類に花粉が付着しない素材のものを着用する。例えば毛のふかふかしたものよりナイロン製の方が付着しづらい。
  • マスクの装用。花粉症用マスクの方が花粉を通しづらい。毎日洗濯し、花粉が残らないように心がける。 立体感の使い捨てマスクも販売されている。
  • 帰宅時や入室時に外で花粉を落とす。
  • 帰宅時に洗顔やうがいをする。
  • 花粉は重いので循環しない又はフィルターの細かい掃除機を使って除去する。
  • 花粉除去フィルターのついた空調機を設置する。
  • 刺激物、アルコール、ヒスタミンを多く含む食べ物(筍、山菜、山芋など)の摂取を控える。
  • 体調、自律神経のアンバランスでアレルギー症状は悪化する。

B. 治療中に注意すること

a)防腐剤無添加人工涙液による洗眼

目の表面へのアレルゲンである花粉や眼症状を起こしてくる原因物質であるケミカルメディエーターを洗い流すことで症状の軽減をはかり、眼脂を洗い出す目的で推奨します。

1日に4~6回行うと良いが、点眼薬の中に含まれている防腐剤による薬剤性角膜上皮・結膜障害の危険性や涙液のバリアー破綻を来す可能性がある。防腐剤の入っていない人工涙液(1本ずつの使い切りタイプが薬局で販売されている)が望ましい。
 

b)点眼時に乾いたティッシュで、ゴシゴシ拭かない

点眼薬による接触性皮膚炎の予防のために目の周りに点眼薬が残らないように拭き取る方が良い。しかし、乾いたティッシュやタオルでゴシゴシ拭くと、まぶたの上皮に傷がつきます。

消毒された硼酸綿で拭き取るのが最も良いですが、なかなか市販されていません。

口や手を拭くウェット・ティッシュは湿っていますが、アルコールや消毒薬が含まれており、却って刺激したり皮膚炎を起こしたりします。
 

c)花粉症の時期、コンタクトレンズの装着による注意点

コンタクトレンズ、特にソフトレンズは花粉症の時期には装用を控えるか、装用時間の短縮、ソフトレンズの1日使い捨てへの変更を勧めます。近年では、アレルギー治療薬が入っているコンタクトレンズが発売されています。

コンタクトレンズが目瞼の裏への刺激、目やにでコンタクトレンズの汚れによる症状の悪化、花粉がレンズに付着したり、ドライアイによる花粉の目への滞留時間の延長、抗アレルギー点眼治療法の制約などがあります。症状が重い時期だけは我慢しましょう!!
 

d)鼻をかむ時に、目をしっかりつぶる。

鼻と目は鼻涙管で繋がっています。鼻で吸い込んだ花粉や涙と一緒に鼻へ流れ出た花粉が鼻涙管から目へ逆流するのを少しでも防ぎましょう。

C. 花粉症治療の実際

a)初期治療

発症する前から抗アレルギー薬の治療を開始すると、眼や鼻炎の症状が軽減されるという。

b)全身治療
  • 減感作療法(免疫療法):抗原エキスを薄い濃度から濃い濃度へ、まず3ヶ月は毎週、その後1ヶ月おきと間隔をあけて注射する方法です。効果は70~80%といわれていますが、2~3年と長期間かかる上に注射をするという点で専門家の間でも賛否両論に分かれています。
  • 抗アレルギー薬内服:内服による花粉症の症状の抑制の報告があり、鼻炎や重症例では1日に1~2回内服する方法があります。効果には個人差があり、副作用(眠気、口渇、全身倦怠感など)や他の内服薬との併用で投与に注意を要する場合があります。内科や耳鼻科と連携し、担当医と良く相談することが大切です。
  • 民間療法:漢方療法(例えば、スギの茶葉、スギナ茶、甜茶など)、ツボ療法(針やお灸で花粉症のツボを刺激)、アロマテラピー(ペパーミントやラベンダーが良いと言われている)があります。確かにストレス解消とリラックスで症状が減ると言われていますが、効果の検証はありません。

c)眼科的治療

眼科による治療には主に、抗アレルギー点眼薬やステロイド点眼薬による点眼薬治療と、眼瞼炎用にステロイドの入った眼軟膏があります。

  • 抗アレルギー点眼薬:抗ヒスタミン作用のない点眼薬(インタール、ケタス、アレギザール、ペミラストン、リザベンなど:商品名)と抗ヒスタミン作用のある点眼薬(ザジテン、リボスチン,アレジオンなど:商品名)を指示に従って1日2~4回点眼する。点眼回数を減らせる点眼薬や防腐剤を含まれないUDの発売でより安全にソフトコンタクトレンズの上からも点眼できるようになった。 
  • ステロイド点眼薬:抗アレルギー点眼薬の発売前では、消炎剤として花粉症治療の中心的役割を担っていました。副作用となるステロイド緑内障や重症な角膜・結膜感染症の発症があることから、花粉症ピーク時や抗アレルギー点眼薬や内服治療でも治療効果が乏しい時に注意しながら短期間だけ点眼を進めています。
  • 眼軟膏:花粉症に伴う眼瞼炎の治療にはステロイドの入った眼軟膏を処方します。しかし、副作用に注意が必要です!

眼鏡の上手な買い方

1.後藤眼科は適切な眼鏡処方に力を入れています。

眼鏡を作るとき、基本的には眼科で検眼し、眼鏡処方箋を持って眼鏡屋さんで作る事が望ましいと思います。 しかし、実際には眼鏡屋さんで検眼して作成する人が多く、それが正しいと思っている人が多いのが実状です。「眼鏡屋さんの方が行きやすい」と言う方が多く、その理由として「眼科は混んでいる」「眼科は仕事の休みの日にやっていない」「眼鏡屋さんの方が親切」「眼鏡を作るのに、なぜ診察費が必要なの?」「すぐに眼鏡枠が選べて時間の短縮が出来る」etc…。

ですが、適切な眼鏡を作る事が何よりも大切です。また、視力が落ちてくる眼の病気が見逃される事もあります。 例えば、失明原因第1位の緑内障は老眼を自覚する年齢の頃に18人に1人が発症し、初期の7~8割は自覚症状がなく、視力検査では発見されないことが多いです。その点、後藤眼科では、ニーズに合った適切なメガネ処方に力を入れているので、安心してお任せください。

2.ベストな眼鏡を作るためのポイント

「眼鏡屋さんがたくさんあるので、どの眼鏡屋で作ればよいか」「おすすめの眼鏡屋さんは有りますか?」と相談される事があります。先に記したように眼科を受診して眼に視力低下を来す疾患が隠れていないかというチェックを受け、眼鏡処方箋を書いて貰うのがベストです。最近は知識豊富で勉強熱心な眼鏡専門店も増えてきました。ですが、ニーズに最適な眼鏡を作成するために、眼鏡は眼科で検眼し、眼鏡処方箋を持って眼鏡店で購入することをおすすめしています。

作成のポイント

1.1年に1回は眼鏡チェック

1年に1回は今使っている眼鏡が適しているか検診を受け、変化を確認しましょう
 
2.検眼時の注意点

  • 家にある眼鏡、眼鏡処方箋、コンタクトレンズを持参
  • 検査前にスマホを見ない
  • 使う目的を絞る。一つの眼鏡で全てをカバーできないことがある
  • 体調の良い時、時間の余裕のある時に検査する

 
3.眼鏡店の選び方

  • 行きやすく、気軽に行け、色々相談できる、家庭眼鏡店
  • 調整や修理が必要なので、対応の良いお店を選ぶ
  • 保証期間を聞く
  • 自分と同世代の顧客や店員のいるお店で選ぶ事により、

3.眼鏡のミニ知識

11世紀アラビアのマルハーゼンによりメガネの原理が考え出され、13世紀末に眼鏡発明されたという(3説がある:ガラスで有名なイタリアのベネチア、フィレンツェの貴族サルヴィヌス・アルユタス、ピサのアレッサンドロ・スピーナ)。

我が国では16世紀の中頃に宣教師フランシスコ・ザビエルが周防(山口)の大内義隆に眼鏡を献上したのが日本第1号と言われており、徳川家康も老眼鏡を愛用した。17世紀には国内でも産出されるようになり、冬場の家内工業として発展し、今日では眼鏡枠生産は北イタリア国境地帯と日本の鯖江市が有名で、鯖江市は国内生産の殆どを占め、世界第1位である。

紫外線と眼

環境破壊によるオゾン層が破壊され、紫外線が多くなりました。目に入ってくる紫外線は、涙および角膜表面で約70%は反射されるそうです。 雪目は、スキー場では紫外線が雪面で反射するので紫外線量が多くなることから、角膜や虹彩に炎症を起こす病気です。失明する事は少ないですが、繰り返すと視力低下を来す可能性があります。目の奥まで達する紫外線の量は少ないとはいえ、視力低下を来す網膜(黄斑)変性や白内障は、紫外線を浴びる時間や量に関連して進行してきます。

予防として、最近では材料の中にUVカットする成分が含まれているコンタクトレンズや眼鏡レンズが増えてきているので、無色・透明でも十分ですが、眩しいなら薄い色を付けると良いです。

目薬は薬にも
毒にもなるよ

目薬の上手な使い方

1. 目薬は薬品・化学物質の希釈液

一般に眼科で処方される点眼液は濃度が0.005-4%と非常に薄い、薬品・化学物質の希釈液です。微量の添加物質も入っています。目にとっては異物であり、害になります。ドライアイの目では角膜や結膜により影響が出やすいため、添加物フリーの点眼薬も増えてきました。

2. 目薬は必要以上に使わない

点眼薬は、眼局所に直接作用する薬です。抗生物質やステロイド剤の内服に非常に神経質になる人でも、点眼薬を意外と安易に考え、長期間点眼しています。点眼液は体への影響は少ないと思われていますが、あくまで薬であり、副作用があること、適切に使わないと耐性菌感染症や緑内障など失明の危険性があることも十分認識して医師の指示に従って点眼することが大切です。

3. 目薬の使える期間

点眼瓶に記載されている有効期限は、開封しないでおける期限です。 開封してから使用できる期間は、1週間から長くても1ヶ月です。

4. 目薬の保存方法

目薬の保存は10度〜30度の温度が良いです。冷蔵庫や常温の指示に従って衛生的に保存します。

4.目薬の点眼順序

数種類を点眼する時には、目薬の効果を良くするために、目的や薬の特徴により順番が異なります。

5.目薬の使用上の注意点

効き目を良くし、全身への影響を減らすために目頭を押さえる点眼薬もあります。
点眼後に目薬が瞼に残らない様に拭き取る時に、眼科窓口や薬局で「目の周りを拭く消毒綿」を購入すると良いです。濡れティッシュは消毒薬やアルコールが含まれているものがあり、目の周りを拭くのには適しません。 以上より、目薬は治療薬であり、正しく使わないと害になります。目薬を処方された時には、正しい点眼法や保存法を医者や調剤薬局で聞いて使用する事が大切です。

コンタクトレンズの
上手な使い方

1.コンタクトレンズの普及にともなって

コンタクトレンズの歴史は古くからあるものの、実用化され日常生活で普遍的な存在になったのはわずか50年余りです。

その後、ソフトコンタクトレンズも販売され、使い捨てコンタクトレンズが主流になり、乱視用や遠近両用レンズと種類も増え、使う側の選択肢が広がってきました。
更に、良質のコンタクトレンズが安価で購入でき、目に負担の少ないコンタクトレンズが開発され、コンタクトレンズのQOLは格段に便利になってきました。しかし、安易におしゃれ感覚でコンタクトレンズを使い、不適切な方法で行うと眼にダメージを与える可能性があります。

2.コンタクトレンズ装用の現状

  1. 現在、コンタクトレンズ装用者は全国で2,000万人超え、全世界で1億人以上います。
  2. レンズの種類とその割合は、数十年前はハードレンズ、従来のソフトレンズ、使い捨てソフトレンズがそれぞれ1/3でした。最近では従来のソフトコンタクトレンズは非常に少なくなり、ほぼ使い捨てソフトコンタクトレンズになりました。
  3. コンタクトレンズ装用者の低年齢化してきました。
  4. 「使い捨てレンズは清潔で安全である」と信じ無茶な使い方をする人がいます。レンズを装用する時に封を切って装用するので、従来の長く使うレンズより清潔である事は確かです。しかし、清潔であることと「長い時間の装用や、無理な使い方をしても安全である」ということは同じではありません。
  5. 購入方法の問題点が急増しています。コンタクトレンズは眼に直接触れる医療機器であり、心臓に埋め込むペースメーカーと同じグレードの高度医療機器です。正しく使用すれば視力矯正や外見の変化を楽しむことができますが、眼に負担をかける可能性もあることを忘れずに注意しましょう。便利なネットで購入する方が増えていますが、定期的に眼科検診をして購入することをおすすめします。

3.コンタクトレンズの歴史

1508年画家であり科学者としても有名なレオナルド・ダ・ヴィンチが大きなガラスの器に水を入れて、その中に顔をつけ、角膜を押しつけて物を見る実験を行っている。コンタクトレンズを作るための実験ではなかったが、これがコンタクトレンズの起源といわれている。
1636年デカルトが同じ様な実験を行い、コンタクトレンズの理論の基礎を築く。水中では角膜の屈折が無くなること、屈折異常が矯正されること、凸レンズによって拡像されることを発見している。
1801年トマス・ヤングが水量によって屈折度を変える事を発見
1827年イギリスのロイヤル天文学者ハーシェルが角膜保護の為の眼盃を作成
1888年スイス人眼科医のフィックがガラス製レンズを自分の眼につける実験をしたが2時間くらいしか装用できなかった。この時に使った「Einekontact-brille=接触した眼鏡」がコンタクトレンズの語源となる。
1926年日本人では石原忍先生(色覚検査表を作った東大教授)がドイツ留学中にツアイスに自分の角膜にあったレンズを作って貰い自分の眼で実験して初めて報告した。
1929年ドイツのハイネ教授がカールツアイスに命じて角膜曲率半径(角膜の丸み)に合わせたガラスレンズのカーブを設定した。
1930年代プラスチック製コンタクトレンズが開発される:ハードコンタクトレンズ
第2次世界大戦で開発が一旦中止、戦後アメリカでアクリル性の角膜レンズ作成
(直径11mm、厚み0.4mmと大きなレンズであった。現在販売されている直径8.5~8.8mmになるのにさらに20年かかる。)
1957年日本で初めてレンズ生産
1960年代チェコでソフトコンタクトレンズ開発
1971年アメリカでソフトコンタクトレンズ発売開始
1973年日本でも販売許可
1970年代後半種々の酸素透過性ハードコンタクトレンズが開発、販売開始。
1990年代使い捨てコンタクトレンズの発売・普及

目だって風邪ひくよ

アデノウィルス性結膜炎

1.原因

アデノウイルス感染により引き起こされる角膜と結膜の急性炎症で、成人ではアデノウイルス8、4、37、19、3型などがあります。特に8型は伝染性が強いです。
ウイルスは細菌より小さな目に見えない微生物です。このアデノウイルスは直径約80nmの正20面体で、上気道感染症や消化器感染症も起こし、特殊なウイルスではなく、どこにでもいるウイルスです。
アデノ3型は夏風邪、4型はプール熱を起こします。いわゆる、角膜と結膜のウイルスによる風邪ひきみたいなものです。体や目の抵抗力が低下し、ウイルスに負けると発症してきます。グラム陰性桿菌などの細菌混合感染を合併すると症状はひどくなります。

2.症状

潜伏期間(感染してから発症までの期間)は、7〜14日。ですが、もっと早く発症する人もいます。
自覚症状:眼球結膜(白目)の充血、瞼の腫れ、涙、眼脂、痒み、異物感など様々です。初期では、流涙と異物感が主です。偽膜形成すると、角膜障害が強く、開瞼不能になります。
他覚的所見:眼瞼及眼球結膜の充血や濾胞や乳頭形成が見られ、耳前リンパ節の腫脹を伴う事があります。

3.診断

結膜擦過物のアデノウイルスの診断が重要です。蛍光抗体法、PCR-RFLP法およびPCR-sequence法があります。アデノチェックで診断が簡便化され、陽性率70%、第5病日までの陽性率が高いです。 学校保健法では登校停止です。

4.治療

  • ウイルスを直接殺す特効薬はありません。
  • 症状を和らげるためと雑菌対策として抗菌剤と非ステロイド消炎剤を点眼します。
    従って点眼しても急には治らないし、症状が治まるまで1〜2週間かかります。
  • アルコール消毒効果は低く、ヨード剤が有効とされています。
  • 偽膜除去

治療のお助け対策として、

  1. 体の抵抗力が低下している時に発症し易いので、ウイルスに対する抵抗力をつけるために風邪同様に体を休める。
  2. 他の人への伝染の危険もあることから、思い切って仕事を休むこと。
  3. 目に触れた後の手洗い施工し、雑菌感染しないこと

が大切です。

よく似た結膜の炎症

1.急性出血性結膜炎

アポロが月に行った頃に流行したこともありアポロ病とも呼ばれるが本当でしょうか。エントロウイルス70型の感染により発症します。潜伏期間が非常に短く、感染後1〜2日で劇的に発症する。派手な結膜下出血を伴った目やに、眼痛、灼熱感などが出ます。

2.トラコーマ,クラミジア結膜炎

以前はトラコーマという病名で眼科受診する眼疾患の代表でしたが、テトラサイクリン系の治療薬で撲滅されたと思われていました。しかし、原因であるクラミジア科のC.trachomatisは、呼吸器疾患、泌尿器、生殖器にみられる性感染症として注目されており、結膜炎も着々と増加しています。トラコーマ(A~C型)と、性感染症(D~K型)は血清型が異なります。

新生児は妊婦の産道で感染し、分娩の5~12日後に眼脂、眼瞼の腫れ、充血などで急性に発症します。細菌感染の合併で角膜穿孔する恐れがあり、1ヶ月後には咽頭炎や肺炎を併発する事があるので、産科・小児科との連携が大切である。大人では大きな濾胞性結膜炎を起こし、眼脂が多く、角膜に血管侵入や上皮混濁を起こしてきます。 性感染症(尿道炎や子宮頸管炎が多い)の自覚症状は乏しいが、抗菌剤やステロイド剤の点眼で難治性の目やにの多い結膜炎の場合には本疾患を考え全身治療も必要となる。

3.花粉症

4.ものもらい(麦粒腫)

眼瞼の腫れや目やにの代表疾患として麦粒腫=瞼にある油の腺の細菌感染によるできもの(急性化膿性炎症)がある。同じ瞼にできる霰粒腫=ふきでもののようなもの(慢性肉芽性炎症)もある。この霰粒腫の急性に化膿してくると麦粒腫に似て、瞼が腫れ、目やにや痛みを伴う。結膜にも細菌感染が発症し、結膜炎同様の症状が出たり、早期には瞼が腫れぼったく、ゴロゴロ感、目やにが出て充血します。痛みを伴うことが多いので鑑別でます。治療は抗菌剤の点眼や内服、場合によっては切開手術を施行する。下記の時には注意してください。

  1. 繰り返して起こるまたはたくさん大きなものが出来る時には、細菌に対する抵抗力が落ちている、例えば糖尿病や白血病などの血液疾患が隠れている可能性があるので内科医と相談も必要となります。
  2. 瞼の縁に塊が出来やすい時には、血液の脂肪分(コレステロールや中性脂肪)が多い事も有るので内科受診をおすすめします。
  3. しこりが大きくなる、なかなか治らない、表面が凸凹している、あまり痛くない時には頻度は少ないものの瞼の癌という事もあります。放置せずに眼科医に相談してください。

5.ヘルペス性眼瞼炎

眼球結膜が充血し、ごろごろした異物感を感じる。目やにが出る事もある。瞼の縁に赤いブツブツが並んでいて触ると痛みがあります。瞼から顔面に広がる事も稀にあるので注意してください。

目だって老化するよ

最近、目がかすんで、文字などが見えづらくなってきた方は、屈折異常(近視、乱視、老視)、白内障、網膜(黄斑の病気など)、緑内障などの原因疾患の確定診断が必要になります。早期診断と治療が大切です。 眼鏡処方に必要となりますので、お使いの眼鏡やコンタクトレンズをご持参ください。

加齢で出てくる疾患

老眼

40歳以上で近くを見ようとするとぼける、何となく見えづらい状態です。

経年変化のため、治療方法はありません。楽に見える眼鏡装用をお奨めします。

結膜下出血

透明の眼球結膜と白目の強膜の間にある血管からの出血した状態です。

見た目が悪いですが、重篤な疾患ではありません。原因疾患の治療を優先します。

白内障

治療の中心は手術です。

当科では手術設備がありません。信頼できる眼科へご紹介します。

加齢黄斑変性

高齢化で患者数が増えてきました。

詳しい説明は下記を参照ください

 1. 老眼

病態:40歳以上で、近方のピント合わせが下手になり、近くを見ようとするとぼける、何となく見えづらい状態です。遠視の人ではより近くを見るのに頑張ってピントを合わせないといけないので、早めに近方視用のメガネが必要になります。

近くが見えづらい事から、遠視と老視が混同されます。

また、『近視の人は老眼にならない』という誤って認識されますが、『遠くを見る眼鏡を外さないと近くが見えづらい』という事が『老視』です。

原因:水晶体は体の中で1番タンパク質の多いところで、厚みを変える事ができます。若い時の水晶体は柔らかくて弾力性に富んでいて、この水晶体が厚みを変えて、遠くや近くを見る仕組みになっています。

水晶体が濁り、柔らかさが失われる事でピント合わせに必要なレンズの厚みの微調整がスムーズに行われなくなります。

対処方法(経年変化のため治療なし):急に進行する疾患ではないので急に老眼を自覚する人は少ないです。

瞳の大きさによるズームのお助けもあるので、明るい所で見ると少しは見やすくなります。

また、乱視が合併しているとより負担がかかるので、老眼年齢にまだ早いと思ってもお助けメガネという感じで、仕事中など早い年齢から装用する事をおすすめします。

2. 結膜下出血

病態:透明の眼球結膜と白目の強膜の間にある血管からの出血した状態であり、瞬きと重力で赤い面積が広がります(特に下方へ)。抗凝固薬を内服しているとより面積が広く、吸収に時間がかかります。

原因:50歳以上で発症しやすいです。基礎疾患(例:高血圧・糖尿病・脂肪異常)や抗凝固薬の内服、眼球結膜弛緩症など。

50歳以下は、ドライアイ・コンタクトレンズ障害・外傷が多いです。

自覚症状:軽い異物感以外にはほとんどの人が訴えないです。他人に指摘されるか、鏡を見て初めて気が付くことが多く、赤みが強いと「失明する」と異常に心配する方もいます。再発は、ドライアイや眼球結膜弛緩症に多いです。

治療:出血の消退に点眼薬は即効性なく、点眼の有無での差もほとんどないです。

原因疾患の治療を優先

基礎疾患、抗凝固薬の内服のある方
・重篤な疾患ではなく、失明しないことを説明する
・角膜保護薬を処方する
・内科医と情報共有する

高齢者で眼球結膜弛緩症があり、再発を繰り返す方
・弛緩した眼球結膜を強膜に縫着する
・手術しない時は、非ステロイド点眼薬を処方する

ドライアイ
・角膜保護薬、ムチン分泌促進点眼薬を処方する
・コンタクトレンズ装用、パソコン作業の改善

3. 白内障

病態:白内障は眼科疾患の中でポピュラーな疾患であり、その患者数は全国で1000万人以上です。40歳以上で出現する老人性白内障が多く、日本では、50歳代で約4割、60歳代で6〜7割、80歳代以上でほぼ100%と言われている。いわゆる加齢性の水晶体の濁りが主である。白内障は病気と思わず、年をとると皆出てくる「白髪」みたいな物と気楽に考えてください。

本来、目の中に光が吸収されると瞳孔=ひとみは黒く見えますが、水晶体が白く濁ると瞳が白く見えることから「白内障」と命名されました。

この水晶体は、カメラのレンズに相当する直径9mm、厚さ4mmの凸レンズで、光を集め(焦点距離2.5cm位)、網膜に画像を映し、ピントを合わせる働きをします。

その成分は、タンパク質33%、水66%、ミネラル1%で、体の中で最もタンパク質の割合の多い場所です。

原因(と言われている因子):老人性白内障は、老化による水晶体の新陳代謝が悪くなり、水分が減少し、水に溶けないタンパク質となり濁る?と言われています。その他には、先天性・紫外線・外傷による水晶体膜の破綻・糖尿病・アトピー体質・ステロイド・放射線があげられますが、その可能性は少ないです。

先天性白内障では、眼が形成されていく過程で母親が風疹にかかった時にひまわり状の白内障心臓疾患が発症することから、妊娠可能な女性の風疹による病歴の有無やワクチン接種が注目されている。

所見や自覚症状:水晶体の弾力性の低下によりピント合わせが下手になってきて、老眼を自覚する頃と一致します。

老人性白内障の濁りは、初めは周りから起こる事(車軸状)が多く、初期では視力への影響は少ないので、ほとんど無症状であることが多いです。

濁りが中央まで及ぶと、視力が低下し、特に暗い所で見えづらくなります。濁りが均等でない時には、水晶体の中で光が乱反射し、眩しくなり、単眼で二重、三重に見えることがあります。

太陽光の下で白っぽく見え、字が読みづらいこともあります。濁りが黄色くなることもあり、色がセピア色に見えるものの、色の変化に気づかない人が多いです。

レンズの中央(核)部が濁ると水晶体が厚くなり、近視化で虹彩が押し上げられ眼圧上昇するので、緑内障になる危険性もある。

白内障の進行は個人差や左右差があり、急に進行する事は少ないので日常生活に支障を感じる事は少ないです。

治療点眼は治療の効果は期待できません。以前は「進行を遅らせる」目的で処方されていました。ピノレキシン製剤(カタリン、カリーユニ)等。内服で有効な薬剤はありません。手術が治療の中心です。

* 1年間に約100万人以上の手術が行われています。

* 現在最も行われている手術方法は、「水晶体超音波乳化吸引術+眼内レンズ挿入術」で、濁った水晶体を超音波で壊し、残った嚢の中に人工水晶体を挿入します。

* 点眼麻酔で手術をし、10分程度で終わり、その日に帰れる日帰り手術(術後しばらくは安静)が多く、最近では全白内障手術例の90%以上を占めます。

* 眼内レンズには単焦点、多焦点があり、仕事や生活のスタイルに合わせて選択します。

* 手術を受けた後、若い頃と全く同じように見えるわけではない。眼鏡での補助が必要になることがあります。

* 簡単で安全と思われていますが、術後感染性眼内炎が生じることがあり、術後の受診と点眼治療が大切です。

* 本格的な仕事復帰は1週間が目安です。

* 術後3ヶ月は視力の変動があり。1ヶ月で眼鏡処方することもあります。

当科では白内障手術はしておりません。信頼できる眼科にご紹介します。

白内障ミニ情報

白内障手術(後藤の手術ビデオ)提示

眼内レンズ

<種類>

単焦点眼内レンズ

・一定の距離ではよく見えるが、それ以外の距離では見えづらい。

・例えば、手元にピントを合わせた眼内レンズにすると、外出時に眼鏡必要

・日常生活で1番見たい距離を選択する

多焦点眼内レンズ

・手元、中間距離、遠方などの位置にピントが合うように設計されている

・単焦点より幅広い距離で見える

・光の周りに輪がかかって見える現象(ハロー)や、眩しい(グレア)が起こる

・生活や仕事によって使えるレンズが異なる

・若い頃と全く同じに見えるようになるわけではない

<費用>

挿入するレンズの種類によって、各医療機関で異なります。

医療機関にお問い合わせください。

4.加齢黄斑変性

病態:加齢で網膜の老廃物(カス)が黄斑部に溜まり、見え方に悪さときたした状態です。

疫学:欧米では成人の失明原因の第1位です。日本でも高齢化と生活の欧米化に伴い患者数が増えてきて、日本でも第4位になりました。50歳以上の約1%に発症し、年齢と共に増加します。新しい治療法が開発され、以前と比べて、視力の維持が可能になって来ましたが、一旦、黄斑に病変が発症すると、完全に元には戻せないのが現状です。

病型:滲出型 黄斑部に新生血管からの血液や滲出物が溜まったもの

   萎縮型  

治療:抗VEGA療法

   抗酸化サプリメント(ルテイン)の継続摂取  

予防効果のエビデンスが示されている 

大量摂取は肝機能低下などの全身に影響する報告もある

白内障、緑内障、
黒内障の違い

白内障、緑内障、黒内障のどれも同じ○内障ではありますが、3つとも違う病気です。

病気がないときには、目の中に光が十分に入っている時には 黒い瞳です。

水晶体が白く濁ると瞳が白く見え、目の内側にい障害物があるために視力低下をきたす病気、これが白内障です。

眼圧が上昇し角膜が濁って瞳が色にみえて視力障害をきたす病気、これが緑内障 です。

瞳がいのに、視神経や視中枢の障害で視力が出ない病気、これが黒内障です。

視力が出ない原因が3つとも異なり全く別の病気なので、治療方法は全く違ってきます。

子どもの目の
成長と育ち方

1. 育てる

1. 視力を育てる

特に3歳未満・就学前、遅くとも8歳までに視力が育ちます。日々、クリアな画像で目を使うことで、自然に見える力を獲得します。自然に育つのに悪さをする因子=弱視になる可能性が大きくなります。

屈折異常:特に、遠視 + 乱視は、遠くも近くもぼやけて見えます。子どもは近くを見ていることが多いので、近視では弱視は発症しづらいです。

視力の左右差:いつもは両目を開けて見ているので、片目が見えなくても困らないです。親も視力の差があることに気がつきにくくなります。 調節力が強いので調節を止める目薬を使って検査します。

2. 両眼視を育てる

将来、外斜視(間歇性)・眼精疲労を来たすことがあります。

  • 生まれたばかりの赤ちゃん。明るいか暗いか位しか分からない。
  • 1ヶ月、物の形が分かる
  • 2ヶ月、色が分かる
  • 4ヶ月、動く物を追視できる
  • 1歳までに急に見えるようになる。両眼視機能も急に成長
  • 3歳頃、半数が1.0で両眼視機能がほぼ完成
  • 6歳、ほぼ大人と同じくらいに見える(脳で見る力が育つ)

2. 斜視

斜視(斜視弱視)は、子どもの約2%が発症します。

内斜視:先天性(3歳未満)

本輻輳>開散力 筋の厚み&力= 内直筋>外直筋

遠視眼では調節性輻輳の負荷でより内斜視になります。

外斜視:後天性(3歳以上)

視力の差、両眼視機能異常 頭の中で眼位を正面に維持できない時に起こります。

上&下斜視や偽内斜視などもあります。

治療:屈折由来の場合は、眼鏡常用で斜視の程度を軽くする。外眼筋由来の場合は手術をした方がよい。3歳までに発見、適正な治療をしましょう。

2. IT(Information Technology:情報技術)と 目

私の子育て時代は、娘たちにテレビでアニメを見せておくと、家事ができ、機嫌が良いので、どうしても見せてしまっていました。今は、3歳未満の幼児にもiPhoneやゲーム機を与えている姿を待合室でよく見かけます。視力検査に受診しているのに、検査前に集中して親子ともに見ています。実際に視力検査をしてみますと、近見反応(調節、輻輳、縮瞳)のバランスが破綻し、視力や屈折度が変動し、まるで老眼のように、近方視力が低下している子どももいます。低年齢の場合、両眼視機能の発達に悪影響を及ぼすと言われています。テレビは画面が瞳孔間距離より大きいので、単眼で見ることは少ないのですが、スマホでは近見で画面が小さいので、単眼で見ることになり、眼位異常をきたすからです。

以前から「40〜50センチ離れる、40〜50分以内」が限度を言われていますが、小児では15分以下が望ましいと考えもあり、努力課題です。

平成25年度文部科学省の保健統計調査では、幼稚園児の裸眼視力1.0未満が24.53%で、前年より約3%増加しています。 

未就学児童で、テレビは100%見ていて、平均2時間。1/3が携帯電話やゲーム機を30~60分見ている。 視力への影響だけではなく、大人の病気を考えられていた眼精疲労やドライアイ、頭痛を訴える子どもが実際にいます。

3. 色覚異常

色覚異常は日常生活上、ほとんど不自由はありません。治療で治る病気ではありませんが、他の人と色の感覚が少し違うだけで、色が全く見えない訳ではないのです。有名な画家、例えばゴッホも色覚異常だったと言われ、個性的な絵を書いています。

色覚異常の遺伝子はX染色体に存在。日本人男性の20人に1人、女性で500人に1人。

網膜には杆体(明るさに鋭敏に反応する)と錐体(色を見分ける)の二つのセンサーがあります。M錐体=緑の光に主に反応、L錐体=赤の光、S錐体=青の光

錐体の異常=色覚異常

 M異常=2型異常(日本人男性の4%)

 L 異常=1型異常(1%弱)

 S 異常は稀

検査方法&注意点

 スクリーニング 石原色覚検査表

 通常      標準色覚検査表

 パネルD15(パスすれば中等度以下の異常)過半数、プライバシー保護が必要です。

親や社会の対応

1. 生活:見分けにくい色でも自分の情報の経験とともに色を判断する能力が備わっていきます。1型では赤が薄暗く見えるので、薄暗い条件下では信号の赤と黄色を間違えたり、橙色の街灯と黄信号の見分けがつかないことがあるので、安全のために教える必要があります。

2. 進学と就職:特殊な大学や仕事でなければ、制限が少なくなってきましたが、具体的に内容を調べておく必要があります。

3. カラーユニバーサルデザイン化:青と黄色の組み合わせ、明るさの差、色の周囲に無彩色(白、グレー、黒)で縁取りなどをして、色使いに配慮が必要です。

4. 心因性視力障害(目の心身症)

定義:目に器質的病気がないのに、視力が出ない(検査データが悪い)状態です。嘘をついているのではなく、本人は本当に見えていない。視力障害の割には日常生活に支障を感じていないし、他の子と行動は変わらない。8~12歳に発症のピークがあり、女児は男児の3~4倍です。

原因:心因的ストレス、眼鏡願望など。不明のこともあります。

症状:視力測定時にどんどん視力が低下したり、近見視力>遠見視力の差が出ることもあります。視力実測時にプラスマイナスレンズの組み合わせて正視の度数で視力が出ます。視野異常(求心性狭窄、螺旋状視野)ピンクに見える、夜見えないなどの訴える事もあります。

診断:目に器質性疾患がないことを否定します。家族も視力低下があることに気がついていなません。眼鏡処方(ほとんど度数のない)すると、視力がアップします。

治療:まず、心因的ストレスの除去が必要で、家族や周囲の協力が必要になります。小学生では暗示療法が有効で、3ヶ月以内に70~80%、1年以内にはほぼ視力は改善します。

1年以上継続する場合や、繰り返す場合、聴力障害や呼吸器異常を伴う場合には、かかりつけ小児科医や専門の小児精神科医との連携が必要になります。