涙の働きと
ドライアイ

1. 涙って?

比重は1.59%、浸透圧は0.9%の生理食塩水に相当します。
正常時の正常分泌と何か刺激があった時や泣くときに主涙腺から出る分泌があります。この正常分泌は極めて少量で、1分間の分泌量はわずか約0.7~1.2ul、就寝時にはさらに涙液交換率は低下します。

角膜表面を保護するムチン層と約1ulの涙液が厚さ約7umの非常に薄い均一な涙層を形成し、1番外側にマイボーム腺から分泌された油の膜の3層構造で被われています。
点眼薬1滴量は30~50ulに設定されている事が多いです。
(眼科から処方される点眼薬は5mlが多いので、1瓶は100滴分に相当します)。


涙の働きは、

  1. 目の表面を潤わせ、角膜・結膜を保護する。異物を洗い流し、目の表面を掃除します。
  2. 角膜に栄養を与える、瞬きを介して大気から取り込まれた酸素を角膜に供給します。
  3. リゾチームに代表される殺菌作用があり、目を外敵から守ります。

簡単に言えば、たっぷりの綺麗な涙で目の表面に酸素と栄養を与え、しっかりとした瞬きで綺麗にお掃除してくれる栄養ドリンクのような物です。

2. ドライアイとは?

「涙液の量的または質的異常により起こされた角・結膜障害」と教科書には記載されています。
涙の分泌量減少だけでなく、瞬目が悪い為に涙の入れ替わりや表面のカバー力が悪かったり、涙の分布が均一でなかったり、分泌物が多いために涙が汚れて質が低下した涙の事です。

目の表面の潤いが保たれていない状態のことです。

  1. 量:涙液分泌不全型ドライアイ
  2. 質:BUT短縮型ドライアイのBUT(Break Up Time)=涙液層破壊時間短縮型ドライアイ


ドライアイ人口は2200万人以上で、年々患者数、重症例が増えています。
その背景には、

  • パソコンの普及による瞬目減少や涙液分泌減少、涙液の質の低下
  • 空調により室内の乾燥
  • ソフトコンタクトレンズ装用者数の増加  装用時間の延長
  • 調節異常の60%はドライアイを合併
  • ドライアイに対する患者の意識の向上
  • 精神的ストレス

3. ドライアイの症状や検査所見

慢性の眼表面の乾燥感で、はっきりしない、さまざまな症状が目に不快感を与えます。
疲れ目 乾き目  目の痛みやかゆみ 異物感  めやに  かすみ目 充血  など
涙液分泌検査が必要です。

4. ドライアイの治療

防腐剤無しまたは少ない人工涙液、角膜保護剤を点眼して 乾燥感や目の症状を改善させます。
ムチン層分泌を促す点眼薬(ジクアス・ムコスタ)

ジクアス点眼液(ジクアホソルナトリウム)は、水分ムチンなどの成分の分泌を促進する作用量と入れ替わりを良くするために、ゆっくりとまばたきをしましょう。

さらに、涙液の過剰な蒸発を防ぎ、平滑な光学面を形成し、まばたきをスムーズにする涙の外層にある綺麗な油膜を作ることも大切です。まばたきした時に泡が眼瞼縁にたまるようであれば、油膜不全です。

そのような時には、入浴時にでも蒸しタオルを目の上にのせて、温まった時に目の縁を押さえて拭くと良いです。約1ヶ月くらい根気強く毎日行ってみると、目の疲れも取れていく、温罨法(おんえんほう)という一つの治療法でもあります。

重症例では、涙点プラグ挿入や涙点閉鎖などの外科的治療も必要となります。このドライアイには、シェーグレン症候群など全身疾患が隠れていたり、薬剤性上皮障害で似たような状態になることから、安易に市販薬で済まさず、眼科医にご相談ください。