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近視・遠視・乱視
近視・遠視・乱視は、屈折異常として知られる眼の状態を示します。これらの状態は、光が正しく焦点を結んでいないために生じる視力の問題です。
- 近視:眼球の前後径(眼軸長)が長いことが多いため、光が網膜の前で焦点を結びます。遠くの物体がぼやけて見え、近くの物体は比較的はっきりと見える特徴があります。
- 遠視:眼球の前後径(眼軸長)が短いことが多いため、光が網膜の後ろで焦点を結びます。近くの物体がぼやけて見え、遠くの物体は比較的はっきりと見える特徴があります。
- 乱視:目の表面の角膜や水晶体の丸みの差があるため、光が網膜の複数の焦点に結ばれます。視力が遠くも近くもぼやけて見え、物体の形が歪んで見える特徴があります。
これらの屈折異常は、眼の屈折力が正常な範囲内にないことに起因しています。
1. 原因
近視・遠視・乱視の原因は複数ありますが、主な要因には以下が含まれます。
- 遺伝的要因:近視、遠視、乱視は遺伝的な要因によって引き起こされることがあります。親や兄弟姉妹が屈折異常を持っている場合、子供も同様の状態になる可能性が高まります。
- 眼球の形状:近視は眼球の前後径が長く、遠視は短い場合に起こります。乱視は角膜や水晶体の形状が球面ではなく楕円形であるために生じます。
- 環境的要因:長時間の近距離での読書やデジタルデバイスの使用、近い物体への集中作業が、近視の進行を促進することがあります。
2. 症状
- 近視:遠くの物体がぼやけて見えるため、遠くの看板や黒板が読み取りにくくなることがあります。近くの物体は比較的はっきりと見えます。視力検査で近視が確認されます。
- 遠視:近くの物体がぼやけて見えるため、近くの文字や手元のものが見にくくなることがあります。遠くの物体は比較的はっきりと見えます。視力検査で遠視が確認されます。
- 乱視:物体が遠くも近くもぼやけて見えるため、視標が楕円形に見えたり、二つに見えたりします。視力検査で乱視が確認されます。
3. 治療
- 眼鏡やコンタクトレンズ:視力を補正するために、眼鏡やコンタクトレンズを使用します。近視の場合は凹レンズ(マイナスレンズ)、遠視の場合は凸レンズ(プラスレンズ)が使用されます。乱視の場合はトーリックレンズを使います。
- 屈折矯正手術:レーシックやICL(眼内レンズ)があり、手術の適応条件やリスクについて専門医の指導を仰ぎ、納得して手術を受ける必要があります。
- 環境の見直し:近視の進行を遅らせるためには、適切な環境での学習や読書、デジタルデバイスの使用時間の制限が重要です。また、遠視や乱視でも眼への負担を減らすために、適切な照明や適切な位置での作業を心掛けることが大切です。
定期的な眼科検診を受け、早期に屈折異常を発見し適切な治療を行うことが、健康な視力を維持するために重要です。また、自覚症状がある場合や視力に不安がある場合は、早めに眼科医の診察を受けることがお勧めです。
斜視
1. 斜視とは
斜視とは、両眼の視線が同じ方向を向かない状態を指します。通常、両眼は同じ方向を向き、対象物を正確に見ることができますが、斜視の場合、片方の目が他方の目とは異なる方向を向いています。これにより、脳が両眼からの映像を統合することが難しくなり、立体視や遠近感が低下します。斜視は通常、幼少期に発症し、未治療のまま成長すると視力低下や両眼視機能が障害されるリスクが高まります。
子どもの約2%が発症
2. 原因
眼筋の不均衡:目の眼筋が弱い、収縮しにくい、収縮が強いなどの理由により、両方の目が正確に動かせないことが斜視を引き起こします。
屈折や調節異常:視力の左右差が調節性内斜視などがあります。
眼の神経の異常:脳から目を動かす神経のコントロールが不適切な場合、斜視が発症します。
3. 症状
眼の向きの異常:片方の目が他方の目とは異なる方向を向いていることです。
複視:斜視によって見ている物が二つに見えると自覚します。
片目つぶり:片目だけで見ると、二つに見えなくなります。
頭位異常:頭を傾ける、顎をあげたりします。
眼の疲れや頭痛:斜視によって目が疲れやすくなったり、頭痛を感じることがあります。
4. 種類
1)偽内斜視
視軸と目の中心がズレている時や乳幼児で両眼の鼻側が広い時に一見斜視があるように見える
2)内斜視
乳児(先天)内斜視:6ヶ月未満で発症している、外直筋運動制限の事がある
調節性内斜視:遠視眼に多い、良くみてくれるようになる6ヶ月以降に多い、外眼筋不均衡は弱い
部分調節性内斜視:遠視眼に出るが、遠視の眼鏡で矯正しても内斜視が残る
後天内斜視:成育後に発症する、外転神経麻痺やスマホ内斜視がある
3)外斜視
間欠性外斜視:斜視がないときもある、両眼視機能が成育してくる3歳以降に多い
恒常性外斜視:常に外斜視がある
4)上下斜視
上斜筋麻痺では頭を傾けて代償している
5)麻痺性斜視
糖尿病や頭蓋内疾患など外眼筋の神経支配異常や筋力低下で発症する
5. 治療
屈折異常の矯正:斜視の目の屈折異常を矯正するためのメガネやコンタクトレンズを使用します。
眼筋手術:斜視の目の眼筋を調整するための手術を行います。
眼の訓練:斜視の目の視線を正確にコントロールするための訓練を行います。
幼少期の早期治療は効果的であり、成長による脳の可塑性を活用することが重要です。定期的な眼科検診を受けることで、弱視や斜視を早期に発見し、適切な治療を行うことが大切です。 近年、パソコン作業やタブレット操作、特にスマホの近見凝視が原因の内斜視が問題になっています。調節障害も加わり、眼精疲労や体調不良になることもあり、特に幼少時の使用は問題視されています。
弱視
1. 弱視とは
視力が成育する幼少期に、発達が障害されて、医学的には視中枢で視力を十分に発達させることができない状態を指します。
視力は、0歳児で0.01位ですが、3歳児になると大人並に成育してきます。しかも、この成育期間に左右差のない綺麗な映像を脳に伝えてあげることが大切です。しかし、これが障害されると、視力の成育が止まり、成長後も眼鏡矯正で視力が出ないことになります。これが弱視です。
3歳未満では正確な視力が測定できない年齢にあたりますので、屈折異常検査や斜視検査で弱視になる可能性が高い場合には、できるだけ早期(成育感受性の高い3ヶ月から18ヶ月の間)に眼鏡矯正を始めます。早期に治療開始することで矯正視力1.0を獲得できる可能性が大きくなります。
眼鏡矯正の目的は、弱視を作らないこと、学童期に「通常の教育を受けるのに困難なほどの低視力」を作らないことです。
2. 弱視の種類
1. 屈折異常弱視
定義:両眼に遠視・近視・乱視が強いために起こる
原因:遠視しかも高度(+6D以上)が多く、近視や乱視が強い場合にも発症します。
症状:遠視眼ではより近くが見えづらいので、目を細めることがある。
中等度遠視では近見時に調節性輻輳で内斜視が発現します
診断:一般眼科検査で目に異常なし 点眼薬(調節麻痺点眼薬)を用いて、より正確な屈折度を計測します。
治療:矯正眼鏡を処方します。年齢や屈折度の変化に応じて処方変更します。裸眼視力が1.0まで成育しても、眼鏡装用を継続する場合があります。
2. 不同視弱視
定義:屈折度の左右差のために片眼の視力障害が起こる
原因:屈折度の左右差が2D以上で起こりやすくなり、大きくなるほどに弱視発生率は高くなります。特に遠視眼では遠近方ともにぼやけた映像になるため、不同視では弱視になりやすくなります。
症状:視力の良い方の目で見ているので、自覚症状はほとんどない。3歳児検診や就学時検診で初めて発見されることが多い
治療:矯正眼鏡処方し、強制的に視力の良い方の目を遮蔽し、弱視眼を使うようにする。弱視が改善しても、両眼視機能成育目的で 眼鏡装用継続のことが多い。
3. 斜視弱視
定義:斜視眼からの映像が脳に伝えられないために、視力が成育していない。
原因:斜視。斜視眼では視線が視力に1番大切な網膜の黄斑中心窩からずれている。
診断:目に視力に影響を与えるような病気がない、斜視のために視力が出ない。
治療:良い方の目を遮蔽し、中心窩で見るように訓練する。視力の左右差が小さくなったら、斜視手術
4. 視性刺激(形態覚)遮断弱視
定義:乳幼児期に形態覚を遮断することで視力回復しない弱視
原因:先天性白内障、角膜混濁、眼瞼下垂(片眼、瞳の位置より下まで)、眼帯装用など
診断:視力が出ない、原因疾患あり
治療:原因の疾患の治療(視力回復は低い)、目の器質性疾患の除去
アレルギー性結膜炎
目が痒い、めやにが出る、赤くなった、まぶたが腫れた
上記の症状がある方は、結膜炎(細菌性、ウィルス性、アレルギー性)、結膜下出血、瞼の炎症(麦粒腫、霰粒腫、眼瞼炎)の可能性があり、治療が必要になります。
1. 病態・疫学
アレルギー性結膜炎は、アレルゲンに対する過敏反応によって実にされる結膜炎の一種です。花粉、ハウスダスト、ペットの毛、食物など、さまざまな物質によって生じます。
日本人の約15~20%がかかっていると推定されており、近年ますます患者数は増えています。
2. 症状
- 目のかゆみ アレルギー性結膜炎では、目の表面にある結膜が炎症を起こすために目がかゆくなります。 かゆみが強い場合は、かきすぎによって炎症を悪化させるため注意が必要です。
- ごろごろ アレルギー反応により瞼の裏の結膜に粒状の盛り上がりができます。これがまばたきの時に黒目(角膜)と接触することによって生じる異物感です。
- 目の充血 目の血管が拡張して血流が増えるため、目が赤く充血して見えます。充血は軽い場合もあれば、激しい場合もあります。
- 涙目 アレルギー性結膜炎では、涙の分泌が膨大になるため、涙目になることがあります。目かゆみや充血もあって、涙目になることで目の症状が悪化することもあります。
- 目やに 白色から透明の目やにが増える場合があります。
3. アレルギー性結膜炎の治療
通常抗アレルギー点眼薬を使用します。症状が強い場合にはステロイド点眼薬や免疫抑制点眼を用いる場合があります。症状を軽減するための抗ヒスタミン薬内服を用いることもあります。
4. アレルギー性結膜炎の予防
アレルギーの原因となるアレルゲンを遠ざける工夫をすることである程度軽減できます。何年もの間花粉症を繰り返している場合は花粉が飛び始める少し前から抗アレルギー点眼薬を使うことで症状を軽減することができます。
上記の症状がある場合は、アレルギー性結膜炎の可能性があります。 早めに眼科専門医に相談し、正しい治療を受けることが大切です。
ドライアイ
1. ドライアイとは
ドライアイは、涙液の適切な量や質が不足している状態を指します。通常、目は涙液によって保護され、清潔な状態を保っています。しかし、ドライアイの場合、涙液が不足しているか、もしくは涙液の成分が正常ではないために、目が適切に保湿されず、乾燥してしまいます。この乾燥した状態は、目の表面に刺激を与え、不快感や痛みを引き起こすことがあります。
2. ドライアイの原因
ドライアイの原因は様々ですが、主な要因には以下が含まれます。
- 年齢:加齢により、涙液の分泌量が減少することがあります。特に中高年以降にドライアイが発症することがよくあります。
- デジタルデバイスの使用:長時間のデジタルデバイスの使用により、まばたきが減少し、涙液が蒸発しやすくなるため、ドライアイのリスクが高まります。
- 環境要因:乾燥した環境や空調の効いた場所に長時間いることで、涙液の蒸発が増加し、ドライアイを引き起こすことがあります。
- 体質的要因:一部の人は涙液の成分に変化があり、ドライアイになりやすい体質を持っています。
- 他の疾患:リウマチやシェーグレン症候群などの免疫疾患、眼瞼下垂、眼瞼腺の機能障害などがドライアイの原因となることがあります。
3. ドライアイの症状
ドライアイの主な所見や自覚症状は以下のようになります。
- 眼の乾燥感:目が乾いている、砂を入れられたような感覚があるなど、目の乾燥を感じることがあります。
- 目の疲れ:長時間の読書やデジタルデバイスの使用、集中作業後に目の疲れを感じることがあります。
- 眼の充血:眼の血管が拡張して充血した状態が見られることがあります。
- 鶏冠状態:目の表面が乾燥して、鶏冠のような模様が見られることがあります。
- 涙液の過剰分泌:目が乾燥しているため、逆に涙液が過剰に分泌される場合もあります。
- 光の過敏:明るい光や風に対して過敏に反応することがあります。
4. ドライアイの治療
- 人工涙液の使用:ドライアイの主な治療法は、人工涙液の使用です。涙液の不足を補うために、定期的に人工涙液を点眼します。
- 湿潤療法:目を湿潤に保つために、目薬や目薬の点眼の他に、保湿マスクを使用したり、温罨法も有効です。
- 環境対策:ドライアイを引き起こす環境要因に対処するために、加湿器を使用したり、デジタルデバイスの使用時間を制限したりすることが効果的です。
- 薬物療法:ドライアイが炎症を伴っている場合、抗炎症薬や抗アレルギー薬の使用が検討されることがあります。
- 手術療法:重度のドライアイの場合、眼瞼腺の圧迫排出、涙点プラグ挿入や涙管を塞ぐ手術が行われることもあります。
ドライアイの治療は、症状の程度や原因によって異なります。適切な治療法を選択し、定期的な眼科検診を受けることで、ドライアイの症状を軽減し、快適な眼の健康を保つことができます。ただし、自覚症状がある場合は早めに眼科医に相談することが重要です。
白内障
1. 白内障とは
白内障は眼科疾患の中でポピュラーな疾患であり、その患者数は全国で1000万人以上です。40歳以上で出現する老人性白内障が多く、日本では、50歳代で約4割、60歳代で6〜7割、80歳代以上でほぼ100%と言われています。いわゆる加齢性の水晶体の濁りが主な原因です。白内障は病気と思わず、年をとると皆出てくる「白髪」みたいな物と考えてください。
本来、目の中に光が吸収されると瞳孔=ひとみは黒く見えるが、水晶体が白く濁ると瞳が白く見えることから「白内障」と命名されました。
この水晶体は、カメラのレンズに相当する直径9mm、厚さ4mmの凸レンズで、
光を集め(焦点距離2.5cm位)、網膜に画像を映し、ピントを合わせる働きをします。
その成分は、タンパク質33%、水66%、ミネラル1%で、体の中で最もタンパク質の割合の多い所です。
2. 白内障の原因(と言われている因子)
老人性白内障は、老化による水晶体の新陳代謝が悪くなり、水分が減少し、水に溶けないタンパク質となり濁る?という説があります。その他には、先天性、紫外線、外傷による水晶体膜の破綻、糖尿病、アトピー体質、ステロイド、放射線などがあげられますが、数は少ないです。
先天性白内障では、眼が形成されていく過程で母親が風疹にかかった時にひまわり状の白内障心臓疾患が発症することから、妊娠可能な女性での風疹既往の有無やワクチン接種が注目されています。
3. 白内障の症状
水晶体の弾力性の低下によりピント合わせが下手になってきて、老眼を自覚する頃と一致します。
老人性白内障の濁りは、初めは周りから起こる事(車軸状)が多く、初期では視力への影響は少なく、ほとんど無症状であることが多いです。
濁りが中央まで及ぶと、視力が低下し、特に暗い所で見えづらくなります。
濁りが均等でない時には、水晶体の中で光が乱反射し、眩しくなり、単眼で二重、三重に見えます。
太陽光の下で白っぽく見えて字が読みづらいと訴えることもあります。濁りが黄色くなることもあり、色がセピア色に見えると言うが、色の変化に気づかない人が多いです。
レンズの中央(核)部が濁ると水晶体が厚くなり、近視化し、虹彩が押し上げられ眼圧上昇し緑内障になる危険性もあります。
白内障の進行は個人差や左右差があり、急に進行する事は少ないので日常生活に支障を感じる事は少ないです。
4. 白内障の治療
治療:点眼は治療の効果は期待できません。以前は「進行を遅らせる」目的で処方されていました。ピノレキシン製剤(カタリン、カリーユニ)等。内服で有効な薬剤はありません。手術が治療の中心です。
- 1年間に約100万人以上の手術が行われています。
- 現在最も行われている手術方法は、「水晶体超音波乳化吸引術+眼内レンズ挿入術」で、濁った水晶体を超音波で壊し、残った嚢の中に人工水晶体を挿入します。
- 点眼麻酔で手術をし、10分程度で終わり、その日に帰れる日帰り手術(術後しばらくは安静)が多く、最近では全白内障手術例の90%以上を占めます。
- 眼内レンズには単焦点、多焦点があり、仕事や生活のスタイルに合わせて選択します。
- 手術を受けた後、若い頃と全く同じように見えるわけではありません。眼鏡での補助が必要になることがあります。
- 簡単で安全と思われていますが、術後感染性眼内炎が生じることがあり、術後の受診と点眼治療が大切です。
- 本格的な仕事復帰は1週間が目安です。
- 術後3ヶ月は視力の変動があり。1ヶ月で眼鏡処方することもあります。
- 当科では白内障手術はしておりません。信頼できる眼科にご紹介します。
白内障手術を受けることで認知症発症リスクが30%低減するという報告もあります。
「手術」という言葉を聞くと「怖い」と思われるかもしれませんが、手術をお勧めします。
白内障ミニ情報
白内障手術(後藤の手術ビデオ)提示?
眼内レンズ
〈 種類 〉
単焦点眼内レンズ
- 一定の距離ではよく見えるが、それ以外の距離では見えづらい。
- 例えば、手元にピントを合わせた眼内レンズにすると、外出時に眼鏡必要
- 日常生活で1番見たい距離を選択する
多焦点眼内レンズ
- 手元、中間距離、遠方などの位置にピントが合うように設計されている。
- 単焦点より幅広い距離で見える
- 光の周りに輪がかかって見える現象(ハロー)や、眩しい(グレア)が起こる
- 生活や仕事によって使えるレンズが異なる
- 若い頃と全く同じに見えるようになるわけではない
〈 費用 〉
- 挿入するレンズの種類によって、各医療機関で異なります。
- 医療機関にお問い合わせください。
緑内障
緑内障は、眼科精密検査で早期発見が非常に大切な疾患です。
視神経がダメージを受ける病気で、進行もゆっくりのため、初期緑内障では90%以上は自覚症状がありません。しかし、日本では失明第一位の病気です。しかも、この視神経の障害は進行することはあっても、元に戻ることはありません。 治療は、現状維持と進行を遅らせるのみになります。従って、早期発見&早期治療が大切な病気です。
1. 緑内障とは
緑内障は年齢とともにかかる確率は高くなり、日本では40歳以上の20人に1人、60歳以上で10人に1人、80歳以上で6人に1人がかかると言われ、成人の失明原因の第一位です。進行が遅いため、末期になるまで視力低下などの自覚症状が殆どありません。また、一旦障害された視神経や視機能は元に戻りません。
検査機器も豊富になり、精度もよくなり、早期診断が可能になりました。治療は以前と比較して点眼の種類は回数も少なくて有効な眼圧下降効果が得られます。
糖尿病患者の増加に伴って糖尿病性網膜症患者数と、高齢化で加齢黄斑変性症の患者数も増えています。近視との関連が示唆され、40歳未満でも患者数は増えています。
自覚症状に乏しいために、検診で指摘されても、診察や治療を受けていない人が多数います。定期的な診察と治療の継続で、生涯 日常生活に支障なく生活できる可能性があります。早期発見・早期治療が重要です。
2. 緑内障の病態
眼圧が正常範囲内(海外では21mmHg以下、日本では10~18mmHgが望ましい)の値でも視神経が傷害され、ゆっくりしたスピードで病気が進行悪化し、視野欠損が出てきます。
更に、いったん障害された視神経は元に戻らず、再生されることもありません。年齢とともに網膜が薄くなり、視神経の本数が減少も加わって、進行します。 従って、自覚症状のない早期に発見し、早期に進行を遅らせる治療を始めることが大切であり、さらに生涯を通しての治療が必要となります。
3. 緑内障の症状
自覚症状
日本では眼圧が正常範囲内にある緑内障が多いく、自覚症状が殆どありません。
緑内障発作で眼圧が急上昇した時には「眼痛」「霧視」「頭痛」「網様充血」などが出ることがあります。
視野欠損も、自覚的には「一部分が霞む」「スッキリ見えない」「眩しい」 など。視野欠損が広がると「見えない場所がある」「文字が飛んで消える」「瞼が下がった」程度に感じます。
視野欠損
初期検査では一部分に視野欠損や薄く見える箇所が検出されます。少しずつ欠損部分は広がっていき、狭くなります。
視野障害は多くの人では、周辺からゆっくり進み、何時もの視力検査での数値は維持されている人が多く、かつ視野欠損を他眼や脳で代償してくれるために日常生活に支障を感じている人は非常に少ないのが現状です。
4. 緑内障の種類
- 正常眼圧緑内障
- 開放隅角緑内障
- 狭隅角緑内障
- 先天性緑内障
- 続発性緑内障
飛蚊症
ゴミのようなものが飛んで見える
硝子体の濁りが網膜に映った影絵を自覚したものです。年齢による変化は心配ありませんが、眼底・硝子体出血、網膜剥離など急いで治療を要する怖い病気が隠れている場合もあります。
散瞳薬で瞳を大きくして、精密検査が必要になります。 その後、2~6時間は車や自転車に乗ることはできません。
1. 飛蚊症とは
眼球の中央には、眼球容積の約80%(体積が約4ml)を硝子(ガラス)体というゼリー状の物質が占めています。通常は透明なため、視界に影響を及ぼすことはありません。加齢とともに溶解、凝固して小さな粒子や線維が存在すると(液化変性)、網膜に投影され、飛蚊症として自覚します。そのために、明るい場所や目を動かした時によりその影を強く自覚します。
更に、網膜からゲル成分の硝子体膜が剥がれ(後部硝子体剥離)が発生すると、飛蚊症の自覚症状がよりはっきりしてきます。通常は無害であり、生理的飛蚊症と判断されます。急に自覚したり、気にすると消えないので不安になることがあります。
2. 飛蚊症の原因
飛蚊症の主な原因は以下のようになります。
- 加齢:年齢とともにガラス体は変化し、老化や凝固が進むことで飛蚊症が発生することがあります。
- 目の病気や手術:網膜裂孔や剥離、ぶどう膜炎や他の原因による出血や炎症など、目の疾患や、白内障術後など手術によっても飛蚊症が引き起こされることがあります。
- 糖尿病網膜症:糖尿病による網膜の変化が飛蚊症を誘発することがあります。
- 眼の外傷:目に外傷を受けることでガラス体に異常が生じ、飛蚊症が現れることがあります。
3. 飛蚊症の症状
飛蚊症の主な所見や自覚症状は以下のようになります。
- 黒い点や糸状の物体の浮遊:視界の中に黒い点や糸状の物体が浮遊して見えることがあります。これらの物体は眼を動かしても一定の位置に留まります。
- 白い点や点状の物体の浮遊:視界の中に白い点や点状の物体が浮遊して見えることがあります。
- 透明なフローター:透明な影やフローターが目の前に浮かんで見えることがあります。
- 群れとしての飛蚊症:一度に複数の飛蚊症が群れて見えることがあります。
- 光のまぶしさへの過敏性:飛蚊症が光によって強調され、まぶしく感じることがあります。
4. 飛蚊症の治療
飛蚊症自体は治療が必要ない場合がほとんどです。飛蚊症の原因となる病態や疾患がある時は、その治療が大切です。特に、視力や視野障害につながる網膜裂孔や網膜剥離は速やかに治療が必要です。
- 病態の治療:飛蚊症が網膜の裂孔や剥離、白内障などの病態に起因する場合、それらの病態の治療が行われることがあります。
網膜剥離
1. 網膜剥離とは
網膜剥離は、網膜という光を感じる組織が眼球の内側から剥がれる状態を指します。網膜は眼球の内壁に位置し、視神経を介して視覚情報を脳に送る重要な組織です。網膜剥離が発生すると、網膜が光に対して適切に反応できなくなり、視力障害が生じます。
網膜剥離は、通常、網膜の下に蓄積した液体が原因で網膜が剥がれることが原因となります。
2. 網膜剥離の原因
網膜剥離の主な原因は以下のようになります。
- 目の外傷:若者に多く、目に直接の外傷を受けた場合、網膜が剥がれることがあります。例としては、事故やスポーツの際(ボクシングや格闘技など)の衝撃、手術による合併症が挙げられます。
- 網膜裂孔:網膜の一部に裂孔ができると、液体が裂孔を通じて網膜の下に入り込み、剥離を引き起こすことがあります。網膜裂孔の原因は、加齢や糖尿病などが関与していることがあります。
- 眼の中の病気:網膜剥離は、糖尿病網膜症、網膜色素変性症などの眼内疾患によっても引き起こされることがあります。
- 高度の近視:高度の近視は眼軸の長さが長く、網膜が薄くなりやすいため、網膜剥離のリスクが高まります。
3. 網膜剥離の症状
網膜剥離の所見や自覚症状は以下のようになります。
- 落ち着かない光の点滅:閉じた目で光の点滅を感じることがあります。
- 短時間の視力障害:視界がぼやける、物が歪んで見える、眼鏡で視力が上がらない、視力が急激に低下するなどの短時間の視力障害が現れることがあります。
- 目の前にフローター:透明なフローター(影や点など)が目の前に浮かぶことがあります。
- 眼球の痛み:眼球の内側や周囲に痛みを感じることがあります。
- 黒いカーテンのような視界:視界の一部が暗く、黒いカーテンのように見えることがあります。
4. 網膜剥離の治療
網膜剥離は早期治療が必要な、緊急性の高い眼の病気です。治療の内容は以下のようになります。
- 網膜裂孔(+)網膜剥離がない場合:網膜裂孔のまわりを凝固して、網膜剥離への進行を予防します。網膜レーザー凝固と網膜冷凍凝固で、裂孔周囲に瘢痕を形成します。
- 網膜剥離が起こっていた場合:網膜裂孔から網膜剥離に進行していたら、手術が必要となります。硝子体手術が多いですが、強膜バックル術(強膜内陥術)もあります。
網膜剥離は、症状が現れる前にも定期的な眼科検診を受けることが重要です。また、既に網膜剥離の症状がある場合は早めに眼科医に相談することが必要です。治療が適切に行われれば、視力の喪失を防ぐことができる場合もあります。
糖尿病性網膜症
1. 糖尿病性網膜症とは
成人病の代表の糖尿病の患者数が予備軍を合わせて約2,000万人に増加し、それに伴い三大合併症の一つである網膜症も増加の一途を辿っています。
他の眼疾患と同様に初期には自覚症状がないために、眼科受診も糖尿病自体の定期検査や適切な治療を放置している人がいますが、成人の失明原因の第三位です。
2.糖尿病性網膜症の要因と症状は?
a. 網膜
高血糖の負担で網膜の血流が悪くなり、網膜の働きが悪くなります。特に視力に1番大事な網膜の中心部の黄斑に浮腫(むくみ)が出ることがあります。見ようとする箇所が見えづらくなり、視力低下や変形して見えるようになります。
更に網膜症が進行すると、血流が途絶えて、補うために新生血管が出てきます。普通の血管は内壁・筋肉・外壁の3層構造になっていますが、新生血管は筋肉層のでき方が悪いので、破れ易く、出血し易くなります。網膜出血や硝子体中出血すると、視力や視野に影響がでます。増殖膜が網膜を牽引し、網膜剥離を生じると、失明に至ることになります。
b. 角膜、虹彩、水晶体、硝子体
角膜混濁、糖尿病性白内障、虹彩の新生血管、星状硝子体混濁
C. 緑内障
3. 糖尿病性網膜症の治療は?
大切なことは、血糖治療です。コントロール良好の場合には、網膜症の発症率も低く、進行も遅いと言われています。
発症した網膜症は、血糖のコントロールが良好でも発症前の視力には戻りません。しかも、点眼治療薬はないのが現状です。
硝子体注射:黄斑浮腫には、新生血管を増やさない目的で目に注射をすることがありますが、100%治癒できるわけではなく、何回も注射が必要な場合があります。
レーザー治療:黄斑中心部から離れた新生血管や無血管領域にレーザー照射治療を施行します。後藤眼科でも治療照射をしております。
硝子体手術:硝子体中に大きな出血や網膜剥離を発症した場合に手術となります。
後藤眼科では、信頼できる先生にご紹介しております。