- 1508年
- 画家であり科学者としても有名なレオナルド・ダ・ヴィンチが大きなガラスの器に水を入れて、その中に顔をつけ、角膜を押しつけて物を見る実験を行っている。コンタクトレンズを作るための実験ではなかったが、これがコンタクトレンズの起源といわれいる。
- 1636年
- デカルトが同じ様な実験を行い、コンタクトレンズの理論の基礎を築く。水中では角膜の屈折が無くなること、屈折異常が矯正されること、凸レンズによって拡像されることを発見している。
- 1801年
- トマス・ヤングが推量によって屈折度を変える事を発見
- 1827年
- イギリスのロイヤル天文学者ハーシェルが角膜保護の為の眼盃を作成
- 1888年
- スイス人眼科医のフィックがガラス製レンズを自分の眼につける実験をしたが2時間くらいしか装用できなかった。この時に使った「Einekontact-brille=接触した眼鏡」がコンタクトレンズの語源となる。
- 1926年
- 日本人では石原忍先生(色覚検査表を作った東大教授)がドイツ留学中にツアイスに自分の角膜にあったレンズを作って貰い自分の眼で実験して初めて報告した。
- 1929年
- ドイツのハイネ教授がカールツアイスに命じて角膜曲率半径(角膜の丸み)に合わせたガラスレンズのカーブを設定した。
- 1930年代
- プラスチック製コンタクトレンズが開発される:ハードコンタクトレンズ
第2次世界大戦で開発が一旦中止、戦後アメリカでアクリル性の角膜レンズ作成(直径11mm、厚み0.4mmと大きなレンズであった。現在販売されている直径8.5~8.8mmになるのにさらに20年かかる。) - 1957年
- 日本で初めてレンズ生産
- 1960年代
- チェコでソフトコンタクトレンズ開発
- 1971年
- アメリカでソフトコンタクトレンズ発売開始
- 1973年
- 日本でも販売許可
- 1970年代後半
- 種々の酸素透過性ハードコンタクトレンズが開発、販売開始。
- 1990年代
- 使い捨てコンタクトレンズの発売・普及
コンタクトレンズの歴史は古くからあるものの、実用化され日常生活で普遍的な存在になったのはわずか20年余りである。私が初めてコンタクトレンズを使いはじめた40年位前は普通の(酸素を通さない)ハードコンタクトレンズで直径が9.0mmあり、ナント1枚の価格は15,000円。両目で30,000円。そのころの大学卒業者の初任給より高かった。
その頃に比べて現在では、良質のコンタクトレンズが安価で購入でき、目に負担の無いコンタクトレンズが開発され、コンタクトレンズのQOLは格段に便利になってきた。便利になってきたが故に、安易におしゃれ感覚でコンタクトレンズを使う「甘え」が増え、トラブルが起こってきている。コンタクトレンズに対する甘えを見直し、警報を鳴らす時期にきている。
- 現在、コンタクトレンズ装用者は全国で1,200万人、アメリカで3,300万人、全世界で8,000万から1億人いる。
- レンズの種類とその割合は、以前はハードレンズ、従来のソフトレンズ、使い捨てソフトレンズがそれぞれ1/3という報告があるが、最近では従来のコンベンショナル・ソフトコンタクトレンズが減り、ディスポーザブル・ソフトコンタクトレンズが増えて、大半を占める。特に、20歳以下での急増が目立つ。
- コンタクトレンズ装用者の低年齢化の傾向にあり、ソフトコンタクトレンズの割合、特に使い捨てレンズがふえている。中学生のレンズ装用者の90%、高校生の80%がソフトレンズを使っており、その殆どは使い捨てレンズである。
- 「使い捨てレンズは清潔で安全である」と信じ無茶な使い方をする人がいる。使い捨てコンタクトレンズの安全神話が一人歩きしている。確かにレンズ装用する時に封を切って装用するので、従来の長く使うレンズより清潔である事は確かである。しかし、清潔であることと「長い時間装用したり無理な使い方をしても安全である」ということは同一視してはならない
- 購入方法の問題点が急増:コンタクトレンズは眼に直接触れる医療機器であり、心臓に埋め込むペースメーカーと同じグレードの高度医療機器である。従って、眼科できちんと診察を受けて購入して欲しい。しかし、実際に眼科での購入は少ない。その理由として、レンズ代金が高い、診療代金がかかる、待ち時間が長い、対応が不親切という指摘がある。インターネット通販の上位にはコンタクトレンズがあり、その大半は使い捨てコンタクトレンズと言われている。通販メーカーのホームページにアクセスしてみると、「処方箋不要、検査・診察待ち時間なし、送料不要、眼科医への通信不要」と利便性のみを強調してあり、眼のトラブル発症の場合には自己責任という同意を求める項目もある。量販店の中には、眼科医以外の医者による診療や医師不在時の販売が行われている所もあると聞く。もし、眼にコンタクトレンズが装着できない、治療が必要な眼疾患が発症していた時に適切なコンタクトレンズ装着のアドバイスが出来ないし、眼の健康が守れるとは思えない。